1.ネイティブのようには英語を習得できない
英語をネイティブのように習得できると考える人がいますが,実のところ
語彙1つですらネイティブのように理解できない場合があります 。
例えば get は最も基礎的な動詞の1つですが,日本語には該当する語彙がなく「獲得する」「達する」「用意する」「うまく~する」など様々な意味になります。しかし,本来の意味は「あるもの(人)がある状態になる」「あるもの(人)をある状態にする」で,ネイティブはこのイメージのまま理解できます。しかし,
ネイティブではない日本人がどんなにトレーニングしても,“本来のイメージ”のまま理解することは難しい でしょう。
また,動詞の have は完了形の助動詞としても使われ,「完了」「経験」「継続」などの意味になります。しかし,完了形の have にも動詞の意味「持っている」が生きており,ネイティブはこのイメージのまま理解し,完了・経験・継続の意味の違いは特に意識しません。
さらに過去形の had は過去完了形や大過去形,仮定法過去完了形で使われることもありますが,ネイティブは「持っている」のイメージの延長で理解できます。
動詞は前置詞を伴うとさらに多様な意味になりますが,日本人がネイティブのようにイメージすることは難しく,イディオムとして暗記するのがふつうです。
一部の英語教材には英文法や語法の学習を不要とし,大人でも幼児と同じように習得できるとするものや,日本語の思考を排除した「英語脳」で習得できるとするものがありますが,実際には不可能です。
2.日本人の英語習得の難しさ
人間は長い進化を経て言語能力を身に付けてきました。しかし近世まで,日本語と英語のような大きく異なる言語集団が広く交流することはほとんどありませんでした。そのため,人間には大きく異なる2つ以上の言語を高度に習得する能力はない (必要がなかった)と言われます。
幼少期に両方の言語に接することにより習得できることもありますが(いわゆるバイリンガル),これは個人の素質に依存する部分が大きく,両方の言語とも中途半端にしか身に付かない弊害もあるようです(ダブルリミテッド)。特に男性は女性に比べ言語能力が低く,深刻な弊害に結び付くことがあります。
言語はコミュニケーションに使われるだけではなく,個人の思考活動にも影響します。そのため,フィリピンやシンガポールなど英語と母国語の両方が使われている国では,幼少期に敢えて母国語の方に必要以上に触れさせないことがあるようです。
3.英語が理解しにくい最大の原因は動詞
日本人はネイティブのように英語を理解することはできませんが,その最大の原因は動詞(一般動詞)を英語のままイメージできない ことにあります。
品詞には動詞の他に名詞,形容詞,副詞などがありますが,動詞以外はある程度英語のままイメージすることができます。そのため一般動詞のない文や会話の慣用表現などは,慣れれば英語のままイメージすることもある程度は可能です。
A: Hi, long time no see!
B: Oh my goodness! It's been a while.
A: Do you have time? Let's have tea!
B: I'd love to!
A: This cheese cake is nice and sweet!
しかし動詞が含まれると,単純な内容でも英語のままではイメージできなくなります。
(上記の会話に続く)
B: Have you thought about where would you like to go to dinner on Friday?
A: I am not sure. I don't know that many restaurants around here.
B: You know , we could look online at the local Internet sites.
A: Good. Let's take a look !
動詞はその名の通り「動きを表す詞(ことば)」です。名詞,形容詞,副詞は「画像」としてイメージするのに対し,動詞は「映像」としてイメージする必要があり,文の核になることばも動詞 です。そのためネイティブではない日本人には動詞を英語のままイメージすることは難しく,日本語に頼らざるを得なくなります。残念ながら日本人がどんなにトレーニングをしても,日本語を完全に排除した「英語脳」で動詞をイメージすることは不可能でしょう。
※英語圏に長期間暮らすことにより「段階的に」慣れることはありますが,ひじょうに長い時間がかかり個人差も大きいため,学習の目的にすべきではありません。
実際に英語を読む・聴くときに,理解しにくいと感じる部分にもたいてい動詞が関係しています 。皆さんも英語を理解しにくいと感じたときにその原因を分析してみてください。たいてい動詞が関係しているはずです。
また先に書いたように,英語には get や take など日本語には該当する語彙がない動詞も多く,have や make など該当する語彙があるように感じる動詞でも実際には意味がずれています。
また動詞は,過去形や現在分詞,過去分詞,不定詞など様々に変化し,多くの文法要素として使われます。EEvideoでは難しい語彙にルビ訳を表示することができますが,動詞の訳は原形の意味をカッコ付きで表示 しています。そのため,自然に動詞に注意しながら学習できるメリットがあります。
4.英語で最も難しいのはリスニング
「読む」「聴く」「書く」「話す」のうち,皆さんは英語ではどれが最も難しいと感じるでしょうか?「書く」「話す」と感じるかもしれませんが,専門家によると圧倒的に難しいのは「聴く(リスニング)」だそうです。
言語には,それぞれ固有の周波数があります。
日本語は世界でも最も周波数の低い言語であり,日本人が他の民族に比べて外国語が苦手な理由の1つであるとされます 。
周波数の異なる言語は聴き取りにくくなりますが,日本語と英語の周波数は大きく異なります。一方同じヨーロッパの言語でもドイツ語の周波数は日本語に近く,実際に聞き取りやすいようです。
また,日本語は音(おん)が単純で文字の表記通りにおおよそ発話できるのに対し,英語は音が複雑でスペリングによって音が変わり,日本語の音との共通項もほとんどありません。
そのため「読む」学習をするときも,常にテキストと合わせて英語を聴きながら学習する方が,英語のリズムが分かりやすくなり学習効果が高いとされます。
英語学習の目標として,英語の映画やドラマを字幕なしで見たいという人がいますが,これは実際にはひじょうに高い目標で,英語が得意な人でもなかなかできることではありません。
5.馴染みのない表現は聞き取れない
英語は日本語とは表現が大きく異なることがありますが,リスニングでは馴染みのない表現はひじょうに聞き取りにくくなります。
先に書いたように英語は聞き取り自体が難しいですが,
馴染みのある表現であれば,聞き取れていない部分もある程度は脳で補正することができます 。 一方
馴染みのない表現は,聞き取れていても認識できません 。
皆さんは以下の英文を聞き取ることができるでしょうか?
映画「タイタニック」(1997年)のワンシーンで,タイタニック号の出航後,アメリカンドリームを夢見る主人公が甲板に出て叫ぶシーンです。
わずか6語のかんたんな英語ですが,日本人には馴染みのない表現です。
【映画タイタニック(30秒)】
※せりふの英文はこのコーナーの末尾を参照してください。
VIDEO
リスニングがかなり得意な方でも聞き取れないのではないでしょうか。
このセリフは興奮して叫んでいるため聞き取り自体も難しいですが,表現に馴染みがあれば聞き取れるはずです。
そのため
リスニング力を高めるには,英語らしい表現にじゅうぶんに慣れる必要があります 。
EEvideoでは英語の表現のまま理解することを重視しており,「直訳で理解 → 分かりにくい部分は補足」するトレーニングを行うことができます。
【せりふの英文】
I'm the king of the world!
直訳は「私は世界の王様だ!」ですが,吹き替えでは「世界は俺のものだ!」と翻訳されています。
ごくかんたんな英語ですが,日本語ではしない表現のため馴染みがないと聞き取るとはできません。
6.ビジネスでの英語の使われ方
転職支援サービスDODA(会員数約380万人)の調査によると,保有する約20万件の求人のうち,上級レベルの英語力(商談・交渉)を求める求人は約27%,初級レベルの英語力(ビジネス文書中心)を求める求人は約56%で,
全体の8割以上の求人が英語力を求めています 。
転職支援サービス会社のため通常より高い条件の求人が多いと予想されますが,ほとんどの求人が英語力を必要としており,その多くがビジネス文書中心の英語力で,
必ずしも高い英語力だけが求められているわけではない ことが分かります。
出典:DODA「グローバル採用の実態調査2013」
またリクルートの調査によると,日常的に会話として英語を使う人が全体の約9.5%であるのに対し,約35%が日常的に英語を読む必要があり,約22%が日常的に英語を書く必要があると回答しています。
ビジネスでは英会話中心のイメージがありますが,
実際には「読む」「書く」の方が重要です 。
出典:リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所「PMSmessage vol.24 2011.08」
7.社会人や大学生の英語学習方法
カリキュラムによって進められる高校までの英語学習と異なり,
社会人や大学生は自分の興味のある内容で学習したいという意向が強く,特に英語圏の生(なま)のコンテンツは人気があります 。
最近では特に動画の人気が高く,2019年の調査では,英語学習者の内, YouTube などの動画で学習する人が約45%,海外ドラマやテレビで学習する人が約32%など,
ほとんどの人が動画を利用しています 。
一度動画で学習するとテキストや音声だけでは物足りなくなり,将来的には動画の人気はさらに高まることが予想されます。
出典:国際ビジネスコミュニケーション協会「英語学習の実態と意欲に関する調査結果2019」
動画など一般のコンテンツは以前から学習に利用されており,高い学習効果が実証されてきました。
少し古いですが,2011年のリクルートの調査では,
効果のあった学習法として 多聴や映画,ドラマ,ニュースなどが挙げられています 。一方で,効果のなかった学習法としては参考書,単語の暗記,英会話学校が挙げられ,理由として,「飽きる・単調・面白くない」「効果が感じられない」「難しく能力に合わない」「定着しない」などが指摘されています。
出典:リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所「PMSmessage vol.24 2011.08」
しかし動画などは英語圏の一般のコンテンツのため,「発話が速い」「語彙や表現が難しい」など不満も多いようです。EEvideoでは,学習サポートにより英語の苦手な人でもストレスなく学習できます。
8.ビジネスで必要な文法力
英語の上達には英文法や語法,英単語の知識も必要です。
英文法は英語を「書く」「話す」時には必須ですが,「読む」「聞く」時には英語のリズム(区切り)の方が重要です。しかし,英文法により英語理解は深まり,英文を区切るのにもある程度の文法力が必要なので,高校レベルの文法力はぜひとも身に付けておくべきです。
中学高校では英文法を細切れに学習するため全体像を把握しにくいですが,実のところ英文法は驚くほどシンプルです。英語と日本語では,文法に共通する部分もあれば異なる部分もあります。また英語の異なる文法事項どうしにも共通する部分があります。
異なる部分を中心に学習することで,学習すべき英文法はコンパクトになります 。
英文法の学習自体には時間はかかりませんが,使いこなすにはじゅうぶんなトレーニングが必要です。EEvideoでは英文中に区切りを入れているため(スラッシュリーディング),英文中で使われている英文法や語法にも注意しやすくなるメリットがあります。
9.ビジネスで必要な単語力
英文法に比べ 英単語はひじょうに厄介です。大学入試(センター試験レベル)で必要とされる英単語数は2000~3000語であるのに対し,英語圏で一般に使われる英単語数は5万語程度で,やさしい英字新聞を読むのにも最低1万5000語が必要とされます。
年齢が高くなるほど記憶力は衰え,使わないとすぐに忘れてしまいます。難易度の高い単語ほど使用頻度は低いので,せっかく覚えてもすぐに忘れてしまうでしょう。
またビジネスで必要なスキルは英語力だけではありませんので,仮に1万5000語の英単語を覚えその記憶を保持することだけでも,一般的な社会人にとってはほぼ不可能です (海外駐在員など,英語の必要性が特に高い人を除く)。単語の暗記はひじょうにつらい作業でもあり,やみくもに英単語を覚えることは避けるべきです。
最近では翻訳ソフトやデジタル辞書が普及し,ビジネス文書も電子メールやPDFなどデジタルでやりとりされます。特にリーディングでは翻訳ソフトを利用し,不十分な部分を人間が捕捉していくことが一般的です。
そのため,語彙や語法などの「知識」より,英文の分析や読解などのコンピュータにできない本質的な英語力が求められています 。
そこで社会人にとって現実的な方法としては,例えば暗記は大学入試程度の英単語2000~3000語に留め,それ以上は自分のビジネスに関連する単語を中心に学習する ことです。薬学と機械工学,電子工学では必要な英単語が異なりますし,ホテルやレストランの接客でも必要な英単語は異なります。
EEvideoではユーザーのレベルに合わせて英文中にルビ訳を添えているため,易しい動画は中学レベルの単語力でも学習できます。
10.英会話力は使わないと急速に低下する
一度アップした英語力も,使わないと徐々に低下していきます。特に英会話はその傾向が強く,使わないと驚くほど急速に低下します。
2~3年語学留学や駐在員として海外にいても,帰国後1ヶ月程度で,会話の時に英語が出てきにくいレベル(流ちょうな会話ができない)まで低下することも珍しくありません。
実際に留学経験者の悩みの第1位として「語学力の維持の困難さ」 が挙げられています(日本学生支援機構(JASSO)「海外留学体験者の追跡調査」)。そして,英語力の維持の方法として,英会話学校の活用や英語動画の視聴が挙げられています。
一方で読解力やリスニング力は維持されやすく,特に学校英語のように文法や語法を重視し論理的に学習したものは長期にわたって持続します 。
EEvideoでは英語の動画で学習でき,かつ学校英語のように論理的に学習することを重視しています。